10月1日、日本学術会議の推薦による第25期正会員候補105名のうち、6名の任命を政府が拒否したことが明らかになりました。この行為は「日本学術会議法第7条」による学術会議の「推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」に反するものであり、これまで行われてきた法の運用から手続き的にも解釈的にも大きく逸脱したものと考えざるをえません。
日本学術会議は学術的なエビデンスをふまえ、政策提言を行う学術機関です。また政策提言を行う機関が政府から独立性を担保されることは近代国家の歴史に照らして当然であり、普遍的な特徴です。国会すらも閉会のなか、直前かつ理由の説明もない一方的な任命拒否は、ひとり学術会議にとどまらず、法を逸脱した政府の恣意的な干渉・介入と考えざるをえません。
10月2日、日本学術会議第181回総会はただちに「第25期新規会員任命に関する要望書」を提出し、任命拒否の理由と候補者の速やかな任命を要望しています。これに対し5日、首相の理由説明は学術会議の「総合的、俯瞰的な活動を確保する」ためとの発言にとどまりました。これは個々の候補者を拒否した理由についての明確な説明とは到底言えないものであり、9日には首相は任命予定者名簿を閲覧していなかったとの報道すらなされています。特にこの間、公的な放送や政府関係者のSNSなどでは学術会議に対する誤った報道が垂れ流しにされている状況です。
日本学術会議は国際的な女性の人権問題にも比較的早くから立場を表明してきた組織であり、近年でも「女性科学者の環境改善の具体的措置について」(「要望」2000年6月第132回総会)をはじめ、「ジェンダー主流化」をすすめる積極的な「政策提言」として、総合的な分科会編成による「社会と学術における男女共同参画の実現を目指して―2030年に向けた課題―」(2020.9 科学者委員会男女共同参画分科会、第一部総合ジェンダー分科会、第二部生命科学ジェンダー・ダイバーシティー分科会、第三部理工学ジェンダー・ダイバーシティ分科会)などを進めています。今回任命を拒否された研究者は、哲学・法学・政治学・歴史学などすべて第一部「人文・社会科学」の委員会に所属する予定の研究者であり、ジェンダー史学会としてはいっそう容認できない事態です。
ジェンダー史学会は、学術会議の提言は、ジェンダーを考える上で大変重要であると考え、日本学術会議による「第25期新規会員任命に関する要望書」が早急に実現することを強く望むものです。
2020年10月13日
ジェンダー史学会理事会
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