2020年10月14日水曜日

日本学術会議第25期新規会員任命拒否に関する声明

 

 101日、日本学術会議の推薦による第25期正会員候補105名のうち、6名の任命を政府が拒否したことが明らかになりました。この行為は「日本学術会議法第7条」による学術会議の「推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」に反するものであり、これまで行われてきた法の運用から手続き的にも解釈的にも大きく逸脱したものと考えざるをえません。

 日本学術会議は学術的なエビデンスをふまえ、政策提言を行う学術機関です。また政策提言を行う機関が政府から独立性を担保されることは近代国家の歴史に照らして当然であり、普遍的な特徴です。国会すらも閉会のなか、直前かつ理由の説明もない一方的な任命拒否は、ひとり学術会議にとどまらず、法を逸脱した政府の恣意的な干渉・介入と考えざるをえません。

 102日、日本学術会議第181回総会はただちに「第25期新任命にする要望」を提出し、任命拒否の理由と候補者の速やかな任命を要望しています。これに対し5日、首相の理由説明はの「合的、俯瞰的な活保する」ためとの発言にとどまりました。これは個々の候補者を拒否した理由についての明確な説明とは到底言えないものであり、9日には首相は任命予定者名簿を閲覧していなかったとの報道すらなされています。特にこの間、公的な放送や政府関係者のSNSなどでは学術会議に対する誤った報道が垂れ流しにされている状況です。

 日本学術会議は国際的な女性の人権問題にも比較的早くから立場を表明してきた組織であり、近年でも「女性科学者の環境改善の具体的措置について」(「要望」20006132回総会)をはじめ、「ジェンダー主流化」をすすめる積極的な「政策提言」として、総合的な分科会編成による「社会と学術における男女共同参画の実現を目指して―2030年に向けた課題2020.9 科学者委員会男女共同参画分科会、第一部総合ジェンダー分科会、第二部生命科学ジェンダーダイバーシティー分科会、第三部理工学ジェンダーダイバーシティ分科会)などを進めています。今回任命を拒否された研究者は、哲学・法学・政治学・歴史学などすべて第一部「人文・社会科学」の委員会に所属する予定の研究者であり、ジェンダー史学会としてはいっそう容認できない事態です。

ジェンダー史学会は、学術会議の提言は、ジェンダーを考える上で大変重要であると考え、日本学術会議による「第25期新任命にする要望」が早急に実現することを強く望むものです

20201013

ジェンダー史学会理事会

2020年10月12日月曜日

2020年度ジェンダー史学会第17回年次大会は12月13日(日)開催です!

 ジェンダー史学会第17回年次大会

ジェンダー史学会第17回年次大会は、20201213日(日)、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、オンラインで開催する予定です。

 

●日時:20201213日(日)10:0017:30

●会議プラットフォーム:zoom

●タイムスケジュール(詳細は下記)

受付開始 9:30

自由論題およびパネル報告 10:0012:15

総会 12:3013:15

シンポジウム 13:3017:30

●大会参加費  無料

 

※参加手続き及び関係事項

・参加を希望される方は、126日(日)までに、こちらのフォーム〔https://forms.gle/w75B2CAuMKu7bF9D8〕から事前登録をお願いいたします。接続先URLは、参加登録をされた方に後日お知らせします。

 

・部会および総会はzoom meetingにて、シンポジウムのみzoom webinarにて開催します。

 

zoom参加時には、登録フォーム記載の氏名で入室してください。登録の有無を確認します。

 

・登壇者以外の参加者は、ミュート/画面非表示にご協力ください(ホストが強制的にミュートにする場合がございます。あらかじめご了承ください)

 

・質問はチャット欄へご所属・氏名を記入、など、参加時のルールについては、当日、司会よりご案内いたします。

 

・非会員の方のご参加は、シンポジウムのみに限ります。

 

・報告の配付資料は事前に大会実行委員で集約し、ひとつに統合します。上記フォームにご登録いただいたメール宛てに、大会3日前をめどにアクセス先をお知らせしますので、各自でダウンロードしてください。当日、部会ごとには配布されませんのでご注意ください。詳細につきましては、参加登録のうえ、案内メールをご参照ください。

 

zoomの接続・操作練習会は開催いたしません。接続や操作方法を確認したい方は、zoomのテストミーティングをご利用ください。詳細は以下のサイトをご参照ください(https://support.zoom.us/hc/ja/articles/115002262083

 

・その他、本年次大会に関してご不明点等ございましたら、大会実行委員会(ghaj2020@gmail.com)までお問い合わせください。

  

自由論題報告 題目&タイム・スケジュール

部会A  司会:小檜山ルイ(東京女子大学)

10:00―10:30

◆阿部奈緒美(奈良女子大学)

 植民統治初期の台北における日本人産婆団体の「先進性」

10:35―11:05

◆石月静恵(桜花学園大学)

 女性ネットワークの誕生――全関西婦人連合会の成立と活動

11:10―11:40

◆佐々木啓子(電気通信大学名誉教授

 戦前期女子海外留学・派遣の実態調査にみる女性リーダーたちのトランスナショナルな経験

11:45―12:15

◆洲崎圭子(お茶の水女子大学)

 境界で「わたし」を語ること ――多和田葉子『旅をする裸の眼』一考察

 

部会B  司会:池田忍(千葉大学)

10:00―10:30

◆河野夏生(奈良女子大学修士課程)

 近代日本の「ムダ毛」イメージ

10:35―11:05

◆陣内恵梨(大阪大学博士課程)

 神功皇后図像の再検証――大正から平成にかけて

11:10―11:40

◆佐伯綾那(大阪市立大学)

ビザンツ帝国における皇妃専用の産室「ポルフュラ」が帯びた象徴性の変容

11:45―12:15

◆富田裕子(長野県立大学)

 イギリスの女性起業家アニータ・ロディックの生涯と業績

 

部会C  司会:石川照子(大妻女子大学)

10:00―10:30

◆徐潤雅(立命館大学)

 日本の女性解放運動とアジア――1970年代富山妙子の発信と連帯運動を手がかりに

10:35―11:05

◆趙杰(奈良女子大学博士課程)

 鄭毓秀と『中華民国民法典』――女性の婚姻自主権をめぐって

11:10―11:40

◆福永玄弥・郭立夫(東京大学博士課程)

 中国とセクシュアリティの近代――「LGBTフレンドリー」と「病理」言説の間で

 

部会D (パネル報告)

10:00―11:00

◆代表者:臺丸谷美幸(国立研究開発法人水産教育・研究機構)

題目:パンデミック期に再考する社会運動――フェミニスト歴史学者の視座から

報告者① 氏名:長谷川和美(名古屋学院大学)

     題目:戦前の監獄改良運動と病

報告者② 氏名:茶園敏美(京都大学)

     題目:占領初期における米軍の性病対策――フィリピン、韓国、沖縄、日本から

報告者③ 氏名:臺丸谷美幸(国立研究開発法人水産教育・研究機構)

     題目:1950-60年代米国におけるマイノリティ兵士のシティズンシップと人種間の闘争――パンデミック下の公民権運動の源流を求めて

 

報告者④ 氏名:柳原恵(立命館大学)

     題目:COVID-19パンデミックにおけるフェミニズム運動の視座と実践の可能性――南米チリを事例として

司会者    :松本ますみ(室蘭工業大学)

ディスカッサント:松本ますみ(室蘭工業大学)、小野直子(富山大学)

 

11:10―12:10

◆代表者:山下英愛(文教大学)

題目:東アジアにおけるコリアン社会のジェンダー――映像を手がかりに

報告者① 氏名:権香淑(上智大学)

     題目:ドキュメンタリー映画『血筋』から捉える中国朝鮮族の家族とジェンダー

報告者② 氏名:山下英愛(文教大学)

     題目:北朝鮮映画『わが家の物語』(2016)にみる家父長制国家とジェンダー

報告者③ 氏名:梁仁實(岩手大学)

     題目:韓国ドラマ『愛の不時着』の日韓における受容

   司会者およびディスカッサント:北原恵(大阪大学)

 

 

シンポジウム 

「優生学とジェンダー 不妊手術(断種)を中心に
 
 
趣旨

日本は、ナチ・ドイツの断種法をモデルにした国民優生法を経て、戦後、1948年にGHQ占領下で優生保護法を制定し、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを謳った。この法律は、半世紀近く続いたのち、96年に母体保護法へと改定された。優生保護法を所管した厚生省の統計によれば、この間に「優生上の見地から」不妊手術を受けた者は、「強制」と「同意」を含め少なくとも24991名いる。法改正から20年ほど放置された被害者たちは、現在、国家賠償請求の裁判をおこし、いまも札幌や東京などの地裁で裁判が継続している。
 本シンポジウムは、19世紀末にイギリスで産声をあげた優生学が、アメリカ、ドイツ、日本など世界各地に広がる過程で、各国で展開された優生学的断種に焦点をあてる。 「不適者」としての烙印を押し、精管や卵管の切除などにより生殖能力を奪うその行為は、どのように始まり、広がっていったのか。本シンポジウムは、その被害者の声や、この世に生まれいずることのなかった生に耳を傾け、被害者の今を問う試みでもある。
 第一報告では、日本の旧優生保護法下での強制不妊の実態を取材して、『強制不妊旧優生保護法を問う』を刊行した毎日新聞取材班のお一人、上東麻子氏に日本の被害者の現状や取材から浮かび上がった日本の旧優生保護法の問題を問い直してもらう。
 第二報告では、紀愛子氏にナチ・ドイツにおける強制断種政策と、その断種法被害者が戦後に展開した補償請求運動について論じてもらう。
  第三報告では、貴堂嘉之氏に世界で最初に断種法(インディアナ州、1907年)が制定されたアメリカ合衆国の優生学運動を論じてもらい、戦後も1970年代まで続いた「不適者」への強制断種の歴史を検証してもらう。
  20世紀前半に猛威を振るった優生学運動を象徴する「生きるに値しない命」という言葉を想起せざるを得ない出来事が二一世紀のいま、立て続けに起きており、本シンポジウムでは優生学運動、優生思想をジェンダーの視点から問い直す機会としたい。活発な議論を期待したい。

 
司会 豊田真穂(早稲田大学)
 
報告者
第一報告 『強制不妊旧優生保護法を問う』毎日新聞取材班 上東麻子(毎日新聞)
「被害者の痛覚、加害者の無自覚旧優生保護法 当事者の証言から」
第二報告 紀愛子(日本学術振興会)「ナチ・ドイツにおける強制断種と被害者に対する戦後補償」
第三報告 貴堂嘉之(一橋大学)「「不適者」とは誰かーアメリカ合衆国の優生学運動と断種実践