2021年10月1日金曜日

ジェンダー史学会 第18回年次大会(2021年)

 ジェンダー史学会 第18回年次大会(2021年) 


ジェンダー史学会第18回年次大会は、2021年12月12日(日)、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、オンラインで開催する予定です。

●日時:2021年12月12日(日)10:00〜17:30
●会議プラットフォーム:Zoom
●実施校:同志社大学
●タイム・スケジュール(詳細は下記)
受付開始 9:30〜
自由論題およびパネル報告 10:00〜12:15
総会 12:30〜13:15
シンポジウム 13:30〜17:30
●大会参加費  無料

※参加手続き及び関係事項
・参加を希望される方は、12月5日(日)までに、こちらのフォーム〔https://forms.gle/gvNVgHg57hNuPRbJ6から事前登録をお願いいたします。接続先URLは、参加登録をされた方に後日お知らせします。

自由論題報告 題目&タイム・スケジュール 

部会 A  司会:田中 亜以子(一橋大学)            
10:00―10:30
◆山田 千聡(名古屋女子大学)
「料理のジェンダー化―19 世紀英米のレシピから読み解く近代主婦規範―」
10:35―11:05
◆小関 孝子(跡見学園女子大学)
「大正中期における職業としての『女給』」
11:10―11:40
◆原田 理子(関西学院大学博士課程)
「日本の性科学における女性同性愛者―科学による排除の肯定―」

部会 B 司会:野本京子(東京外国語大学名誉教授)             
10:00―10:30
◆クロエ ベレック(東北大学)
「ジェンダーの視点から見た薙刀の歴史――中世における武士の武器から近世における
武家女性の武器へ」
10:35―11:05
◆橋村 愛子(金沢大学、日本学術振興会特別研究員 RPD)
「日本中世絵画にみる仏道修行者としての苦しみの女――食・酒・病と良医妙薬喩(法華
経寿量品)の図像を中心に――」
11:10―11:40
◆陣内 恵梨(大阪大学博士課程)
「神功皇后図像の再検証――1880−90 年代の女権運動における神功皇后の読み替え――」

部会 C 司会:加藤 千香子(横浜国立大学)          
10:00―10:30
◆今井 小の実(関西学院大学)
「軍事救護法の成立と愛国婦人会の組織におけるジェンダー強化」
10:35―11:05
◆崔 誠姫(日本女子大学)
「奈良女子高等師範学校の朝鮮人留学生」
11:10―11:40
◆楊 雅韻(京都大学博士課程)
「戦後日本における男性性の再構築ー化粧を事例に」

部会 D (パネル報告)                   
10:00―11:00
◆代表者:杉村 使乃 (共立女子大学)
題目: 「戦後の女性警察官表象とキャリア形成における国際比較」
報告者 1 杉村 使乃(共立女子大学)
「イギリス女性警察官表象」
報告者 2 平塚 博子(日本大学)
「アメリカの大衆メディアにおける女性警察と制服の表象」
司会・ディスカッサント 池川 玲子(日本女子大学)

部会 E (パネル報告)                   
10:00―11:00
◆代表者:並河 葉子(神戸市外国語大学)
題目: 「女性たちの『生』を可視化する―ジェンダーからみるイギリス帝国」
報告 1 並河 葉子(神戸市外国語大学)
「イギリス領西インドにおける奴隷の女性たちの生殖管理とその後」
報告 2 森本 真美(神戸女子大学) 
「女をめぐる『感情』―帝国のジェンダーとセクシュアリティ」
報告 3 奥田 伸子(名古屋市立大学)
「第 2 次世界大戦直後における『白人』移民女性とイギリス社会 ―― 戦後イギ
リスにおいて『他者』とは誰であったか?」
司会 並河 葉子
ディスカッサント 長 志珠絵(神戸大学)
 

13:30-17:30 シンポジウム

貧困とジェンダー―「公助」の役割を問う

●趣旨文
「女性の活躍推進」の掛け声のもと、日本において女性の就業率は上昇を遂げたが、働く女性の多くは非正規雇用に従事している。非正規の職員・従業員の56%(2019年)を占める女性のなかには、新型コロナウィルスの感染拡大の直撃を受け、解雇や雇止めに追い込まれた人が数多く存在する。
コロナ禍で職を失い、貧困に陥り、心身の健康が脅かされる人びとが多数に上る一方、現代の日本において「公助」は「自助」「共助」に次ぐものとされ、軽んじられてきた。生活保護の相談件数の急増に福祉事務所の体制が追いつかず、「福祉崩壊」が起きているとの声が上がる。このような状況下において「公助」の果たす役割を問い直すことは喫緊の課題である。
「公助」は歴史的にみて必ずしも女性を解放してきたわけではない。たとえば米国において、伝統的な一夫一婦制をモデルとする家父長的福祉国家は、そのモデルに従わない女性を「逸脱」とみなし異性との法律婚へ誘導する一方、それでも従わない女性には「自助」を要求してきた。米国や日本のみならず、他地域においても、福祉政策がいかに人びとの〈生〉と〈性〉に介入してきたのか、ジェンダー規範をつくりだしてきたのかに留意すべきであろう。
「公助」はどのように「救済に値する者/しない者」の線引きを行い、「女性の貧困」(ないしダイアナ・ピアースが「貧困の女性化」と呼んだ現象)を押しとどめ/生み出してきたのだろうか。その過程において、慈善団体や相互扶助団体、宗教組織、家族、貧困層自身はいかなる役割を果たしたのか。本シンポジウムでは「女性の貧困」を比較史的な視点から問うことを目指したい。
「女性の貧困」は不平等な社会を映し出す鏡でもある。「女性の貧困」を起点とし、人種・エスニシティ、国籍、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、障がいに基づく差別の構造を問う必要があるだろう。それは人種主義、新自由主義、排外主義、ホモフォビア、トランスフォビア、障がい者差別と対峙する運動・思想とフェミニズムを繋げる作業となり、「女性」のなかの差異に注目することにもなる。
以上のような多面的な視座に基づき、本シンポジウムでは「貧困とジェンダー」をテーマに、歴史学を中心としながら福祉社会学、貧困研究など学際的視点から「公助」の歴史と今日的意義を問うことを目標とする。
第一報告では、長谷川貴彦氏に、エリザベス救貧法に始まり現代へといたるイギリスを対象として、セーフティネットの解体と再構築という視点から、貧困と福祉の存在形態を明らかにしていただく。同時に、このような分析を可能としている貧困と福祉をめぐる歴史学的アプローチ全体の発展にも言及していただく。
第二報告では、佐藤千登勢氏に、大恐慌期にアメリカの農務省が行った余剰農産物の処理に起源を持ち、その後も農業政策と密接な関係を保ちながら変容を遂げてきたフードスタンプが、余剰農作物の消費拡大という目的の下、家政学や栄養学を通じて、どのように貧困女性が従うべきジェンダー規範を作り出したのかを明らかにしていただく。
第三報告では、丸山里美氏に、女性の貧困は売買春と切り離すことができないことをふまえて、売春防止法にもとづく日本の婦人保護事業について、歴史と現状をたどり、それが女性に何をもたらすものであったかを検討していただく。

●報告者
第一報告 長谷川貴彦(北海道大学)
「『貧困』と『福祉』の歴史学―イギリス近現代史の経験から」
第二報告 佐藤千登勢(筑波大学)
「低所得者への食糧支援とジェンダー―大恐慌期のアメリカにおけるフードスタンプの始まり」
第三報告 丸山里美(京都大学)
「貧困女性の生/性への介入―日本における売春防止法と婦人保護事業を中心に」

●コメンテーター
石川照子(大妻女子大学)
嵯峨嘉子(大阪府立大学)

●司会
土屋和代(東京大学)